コーチが学ぶ場面
社会の発展に伴って、コーチに求められる資質能力は、より多様化してきています。したがって、「コーチが学ぶこと」について考えることは重要なことだと言えます。
コーチが学習を行う場面には大きく3つの場面があります。
①フォーマル学習
コーチ資格取得プログラムや大学での公的な教育プログラムなどで学ぶこと。
②ノンフォーマル学習
クリニック、セミナーなどへ参加して、学ぶこと。
③インフォーマル学習
コーチングの現場での経験を基に、自身の思考から学ぶこと。
公的な資格プログラムや大学の講義での学びはほとんど意味がないと考えているコーチは少なくないようです。
その理由は、内容が抽象的で、既存の学問分野の基礎知識ばかりを学ばされても、それを活用することが困難である…と感じるコーチが多いからです。
これらの理由から、コーチのフォーマル学習への意欲は比較的低くなりがちです。
しかし、フォーマル学習で、その基礎的な情報を学んだ瞬間は、そこまで「学びの実感」がなくとも、それらがその後のコーチ人生において活用されていくことは明白です。
また現場では、コーチ同士の関係性を通した学びというものもあります。
尊敬するコーチや先生から学んだり、他者のコーチングや競技会での選手の振る舞いから自己の学びを深めている場合もあるでしょう。
さらに、コーチとしての学びは、コーチとなる以前から始まっているとも考えられます。
選手として競技に打ち込んでいるときに得た価値観や、コーチに対する認識などは、自分がコーチになってからの振る舞いに大きな影響を与えることでしょう。
また、コーチとしての学びは、そのコーチが「自分はコーチとしてどのような役割を担っているのか」という認識によっても異なります。
チームや団体がある試合での勝利を強く望み、その要求に応えるべく活動する役割があるコーチと、個人でスポーツを行う理由が異なり、各々の自己実現を達成するために活動する役割があるコーチとでは、学習しようとする内容や、その捉え方、反省の仕方に違いが出てくると言えます。
コーチの育成
これらのことから分かるように、コーチが学習する方法というのは様々であり、そのコーチに適した学び方を選んでいく必要があると言えます。
したがって、コーチを育成していくためにはこれまで紹介してきた3つの学びの場のメリットを活かしていかなければなりません。
現在、世界各地でコーチを育成することを目的とした人材やシステムが次々と生まれています。カナダやイギリスの各種競技団体では、コーチ育成を専門とする「コーチデベロッパー」「コーチエデュケーター」という人材を育成し、コーチの学びの支援を進めています。
日本においても、この「コーチデベロッパー」のような人材育成の必要性が指摘されており、スポーツ指導者資格の制度も今後大きく変化していくと考えられます。
参考文献
・日本コーチング学会(2017)日本コーチング学会編, コーチング学への招待. 大修館書店.